女性手帳

 この間,少子化危機突破タスクフォース(のサブチーム)が提示した「女性手帳」が色んなところで取り上げられているようです.マスコミの報道をみると如何にも導入決定みたいな感じなんですが,蓮舫議員が森大臣にふっかけた漫才から,現状では「一案として検討されている」もので,直ぐに実施するものではない(実は名称も決まっていない)ものであることが分ります.また女性手帳は,必ずしも「30歳半ばまでの妊娠・出産を推奨」するものではなく(いわんや「女性はさっさと子どもを産め」というものではなく),女性の選択に配慮しながら基礎的な医学知識の伝達を目的としていることが理解されます(井上明人さんのブログ記事

 それはそれとして,女性手帳のニュースに関する(ネット上の)記事の中に,女性の方々から否定的なコメントを多く見ることができます.例えば,次のような意見です.

  • 「国が『20代で結婚して子どもを産め』と強制しているみたい」。さいたま市の女性会社員(43)はこう憤る。中国新聞
  • 約10年不妊治療を続けてきた北海道の女性(41)は「もし手帳があったら、20代から不妊治療ができたかもしれない」と知識の普及には理解を示す。ただ「政府に産まない人生を否定されたくはない」と、思いは複雑だ。中国新聞
  • 「女性が子供を産むことを強制されているように感じる」(33歳)マイナビウーマン
  • 「その前に、やることがたくさんあるはずだと感じている」(22歳)マイナビウーマン
  • 「手帳を貰うだけで具体的な支援や補助などがきちんと見えてこない。一時的な支援でなく、より育てやすくする環境整備の方を進めるべきだと思う」(25歳)マイナビウーマン
  • 「これらは、ポンコツおじさんが考えたポンコツ政策に見えます。働く女性の実感からはちょっと遠いですね」と一刀両断するのは、東京都在住で高齢者の福祉サービスに携わるAさん(35歳)である。ダイアモンドオンライン
  • 都内の短期大学で事務職を勤めるBさん(32歳)は、女性手帳のニュースに強い反発を感じたという。結婚から5年が経っても子どもができず、不妊治療を考え始めた彼女はこう語る。「出産=幸せという価値観を押し付けられると、もし自分に子どもができなかったときは、『不幸』だと言われているようでキツいです」ダイアモンドオンライン
  • 40をとっくに過ぎている私は、タスクフォースのターゲットにも何にもなっていないし、期待もされていないわけだが、無理やり嫌いな食べ物を口に突っ込まれたような、妙な気持ちの悪さを即座に感じてしまった。日経ビジネスオンライン

 出産に関する医学知識が必要ということは誰でも同意できるはずだし,また,手帳の配布が選択の強制に繋がるわけないので,私的にはこのような否定的な意見が出てくること自体が不思議でした.ただ否定的な意見を述べてらっしゃる方々の年齢をみて理解できなくもないかなと.これら否定的なコメントを述べてらっしゃる方々は30歳以上の方が多いですよね(20代の方もいらっしゃいますが).女性としてキャリアをもってらっしゃる方も多いでしょうし,一定以上の教育をうけ,かつ,出産に関しても十分な知識をもってらっしゃるでしょう.それが故に,女性としてやるべきことが思うようにならず焦っている方々かもしれません.そんな状況で「女性手帳」なるものを突きつけられたら,当然,いい気はしないでしょう.否定的な意見を吐きたくなるのは諾なるかなです.

 でも残念ながら,ここで「女性手帳」が対象にしているのは彼女ら~現在30代以上の女性~ではではないんですよね.ターゲットにしているのは,これから少ないリスクで子供を産むことができる,10代~20代の女性のはず.だから,彼女たち(30代以上の女性)が敵対的な意見をもったとしても,そもそも彼女たちには関係のない話なんです.

 Yahoo!みんなの政治女性手帳についてのコメントが数多く投稿されていますが,その中でも,この観点からは次のコメントが秀逸と思いました.

《10~20代の皆さんへ》ツイッター欄のコメントで、政党別の賛否割合を指摘しているモノがありますが、着目すべきはそこでなく、いつも14%程度だった女性の割合が、本件では現時点で54%あることです。年代別の投票割合も30~40代の合計で約60%あり、見方によっては30~40代の女性の意見が多く寄せられているものと考えることもできます。ですので、この投票を見ている10代~20代の方々は、ぜひとも悩める30~40代女性の方々と思しきコメントを読んで、ご自身の人生設計のイメージしてみてはいかがでしょうか?「男女平等」というのは人としての権利であって、「女性が男性のような人生をおくること」ではないと思います。ちなみに、ギネスブックに載っている世界の最高齢出産記録は66歳です。生理学的な生殖能力も、男性とは違います。そのような性差を知った上で、個人としても女性としても、悔いの無い人生を送りましょう。

ちょっと意地悪なコメントとなりましたが,30代以上の女性達の意見は横に置いといて,10代~20代の女性達(と,もちろんそのパートナー達)に期待しましょう.